薄暮/within
こかすっきりしなかった。気を張らないと、気化熱に生気を持っていかれそうだった。
テーブルに温めた低脂肪乳と今日の宅配の食事とハッサクを並べた。猫が近寄ってきた。キャットフードを器に盛ると、猫は黙って顔を埋めた。
食事はどれも満足のいくものだったが、老人用だったので少し塩気が足りなかった。少しだけ醤油を足した。猫は餌を食べ終わると、彼の方にすり寄ってきた。
「もう食べたならおとなしくしてなさい」
と話しかけても、猫は啼くばかりで、何かを彼に求めているようだった。
「何だい」
と彼は箸を休め、猫を懐に抱き寄せた。温もりのある身体とつやのある毛並みが彼の寂しさに、ほのかな灯火を与えた
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