薄暮/within
床に手をつき、テーブルの上によりかかりながら立ち上がると、壁に伝わされた手すりを頼りに、風呂の湯を確かめに向かった。足元に猫がすり寄ってきた。スーパーに貼り紙されていた里親募集に電話して、気まぐれにゆずり受けたのだった。
服を脱ぐと、脇に置かれた洗濯機の中に、汚れた下着を放り込んだ。湯に浸かり、顔を拭うと、一日の塵埃が拭い去られていく思いがした。風呂場の外で猫が鳴いた。ぼやけた目がじんわりとはっきりしてきて湯気が疲弊した細胞を静めてくれた。この瞬間は、まだ若かった頃とあまり変わらない。張りを失った皮膚が柔らかくのびるようになったが、張り巡らされた神経はいまだ清新さを欠いてはいなかった。
若
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