潮干狩り/salco
ら貝類を余り好まないのはその硬い食感に何か違和感を覚え
たからで、それはやはり動物性蛋白質にあるまじき、噛んでも噛んでも
味は失せつつ消え残るという、女性器の外陰部でも食ってるような歯触
りに尽きるのだろうが、翌日も食卓に貝が出される辟易よりも、寧ろ尻
を濡らした不如意だけが未だ記憶に鮮明だ。
たかが潮干狩り、されど潮干狩り。
土用波が立つ前の海水浴同様、これは子持ち夫婦のオブセッショナル・
レジャーのひとつであって、子供にとっても忘れ難い思い出となる。
見渡す限りの干潮の浜に、雲霞のごとき人々が腰を折り膝を引きつけ熊
手で暗色の砂を穿る。茫々と耳に吹きつける潮風と遙かな潮騒
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