閃篇Ω ちょっとSM/佐々宝砂
 
一人称はないの。あるのは三人称と二人称だけ。ベッドの上でからみあう六本の足、いえ間違えた、六本の葦。ここにいるのは愚かな葦、だけど考える葦、汚れた豚、だけど考える豚。

***

おまえの肩を左手で撫でる。すい、と細い紐が落ちる。やわらかな桃色の蕾をわずか覆い隠していた布が落ちる。こんなもの役に立つのかと問えば、これは素敵なおまじないなのよと言う。俺はおまえのおまじないにも劣るか。また肩を撫でる。肩だけではすまない、もちろん。夜は長い。

***

じらしながら彼は彼女の舌に針を突き立てた。それを見ながら私は針持たぬ私を嘆き、彼女の大腿に噛みついた。いつものように彼女は歓喜し彼は硬
[次のページ]
戻る   Point(4)