メーデー/salco
の内実について父が言及することはなかった。
さてそんな父が一人寂しく炬燵に下肢を突っ込んだまま死体となって発見
される時が来た。
鈍角くの字に硬直していたため葬祭業者に30分ほど悪戦苦闘を強いたと
いう亡骸は、多摩斎場の霊安室に4、5台置かれた棺の、簡素な白木のに
入っていた。ガラスの小窓越しに見る顔に死斑はなかったが、黄色かった
。蝋で作り直したような皮膚にはちりめん皺が寄って、少なくとも死後4
日は経っており水分が蒸発していたのだろう。こんなに顔が小さかったか
と思ったほどだった。
鼻が悪く鼾をかいていた昔通りに口を開けて、ただ歯の無い、そして死ん
だ口中は底知れぬ
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