進藤則夫のした仕事/八男(はちおとこ)
 
心してしまう適当な所もあった。しばらくして私は、劇団自身の活動にはあまり参加せず、進藤が滋賀に来ると夜一緒に酒を飲んだ。みんなの話を疲れながら真剣に、受け応えしていた。よく笑っていた。今、十年ほどたつが、あの時の小学生も結婚していたり、高校生もいる。共通して言えるのは、みな、それぞれの立ち上がり方を知っているのではないか。会うと、そういうふうに見える。人生に恩師は数えるほどしかいないが、間違いなく恩師だろう。私も一門下の一人だと言える。劇団の演出家が代わって、ついぞ顔を出さなくなった。やはり私は、進藤に会いに行っていたのだ。進藤に触れた何人もが、立ち上がって生きている。進藤の仕事だと思う。
名古
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