梅雨/なまねこ
中で、彼は釣竿のリールを巻く。そうやって笑いながら家に帰るのだ。ピザ・トーストを一枚くれた。ふちの焦げをちぎって投げ、僕に渡した。
いつか海で会えるといいですね。僕は生のピーマンを噛み砕きながら言った。いつか魚になって彼に釣られ、彼は僕をびくに入れ、笑って帰るのだ。そしてピザ・トーストの隣に並ぶ。自分のあごを触るとざりざりした髭が伸び始めている。
風邪を引いたころに、ホテルの立ち並ぶ町についた。何かを望む人たちがたくさんあの中に詰まっている。ひとつひとつ鍵をかけて、ホテルは何かを守っている。ホテル前の道路を挟んで海があった。雨が降った。
砂浜に果物が転がっている。真っ赤なボール。何にやられた
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