梅雨/なまねこ
。頭の上に石が乗っている。石は気圧と結びついて、首をぐいぐいと押した。こんなとき首輪は引かれない。首輪についた紐はだらんと垂れ下がったままだ。持ち手の輪は誰も持っていない。僕は一人だ。気付けば首輪は消えていた。潮騒が輪郭を持って山を砕いた。あの山もやがて雨になる。
歩いた。寒い道だ。
海沿いの道はとうに終わり、明かりのない農村の道を歩いた。笑いがこみ上げてくる。ペン一本で僕は何をする。これは甘い時間だ。待ち望んだ甘い時間だ。
馬鹿の乗るバイクの音も聞こえない。ひらひらした風が音も無く抜けていくだけだ。足は止まろうとする。涙が止まらなかった。
急に街灯が並び始めた。羽虫がびりびりと飛びまわり
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