梅雨/なまねこ
。警戒しろと言うのだ。彼を睨めと叫んでいる。隣の部屋では平和な音楽が流れている。車掌が地団太を踏みながら流れ飛んでいった。
財布を持っていないだけで、この椅子に座っているだけで、戦争は起きる。平和な音楽だけでは何も解決しないのだ。
まぶたに汗が浮く。足のホイールが回っている。タイヤに引きずられるように外へ飛び出すと、そこには駅があった。似ているようで知らない駅だった。電車の通るレールが引かれている。鉄を溶かして作ったのだろう。楔を何本も打ち込まれ、血を流しながらレールが伸びている。
ハート柄の便箋で女の子が手紙を書いている。待合室の中は空調が効いていた。気温の高い無言の空間。ペンを走らせる音
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