FREE HUGS・?/高梁サトル
ネをかけた細身の中年日本人男性が立っていた。
手短に自己紹介と握手を交わす。
男の名前は郷田というらしい。
それから2時間程、私たちは香港の街並みを眺めながらとり止めもない話をした。
彼は気分がいいのか、よく喋った。
自分がかつて日本の衆議院議員Sの公設秘書として働いていたこと。
ある日そのSから、Sと同郷の新人衆議院議員Tの参謀役として配下にくだるよう指示されたこと。
「それも先生の地位を磐石にするものならとの思いで、必死にお仕えしました。私の立場から言うのもなんですが、最近の若い日本の政治家というのはちょっと頼りないもので(笑)確固たる思想や信念なんてない、政党に就職したただのサ
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