ウイリーの風/剣屋
 
崇高な声がな」
「それはナナメさんの結末ですよ。あなたは僕に負ける」
 三日月の淡い光が射す中、熱いバイカーである二人の会話をキリコは楽しみながら聞いていた。彼らのとりとめのない話を聞いていると、昼間のファッションデザイン専門学校での実習の疲れが取れる。休日出勤で活動しているファッションモデルの仕事では、所属先の他の女たちに後ろ指をさされることも多いから、二人と一緒にいる時間は清涼剤そのものだ。
「アタシがスタートの合図をするから二人とも準備してね」
 ニンジャとハーレーが横並びになり、騒々しいエンジン音を撒き散らす。闇に溶け込んだ人々は話し声を静め、押し黙ったまま視線をゼロとナナメにやっ
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