ウイリーの風/剣屋
 
なるよ」と慇懃な声で言う。
 ウイリーの手解きをしてほしいとキリコは思った。虚飾のない率直な気持ちである。しかし二つ返事とは程遠い表情になってしまう。ウイリーをするほどの自信と技術が育っていない。下手に取り掛かっても、大事な単車を壊してしまうかもしれないし、なにより二人が心配そうな顔を自分に向けてくるのは避けたい。もう少し慣れてから挑戦したほうがいい。
「まだアタシには無理よ、遠慮しとく。それに二人とも走り足りないんでしょ。時間は充分にあるんだから一勝負でもしてきたら。ゼロが私のニンジャに乗って、ナナメはハーレーに乗ってさ」
 二人は眼を見交わした。キリコの提案に満更でもない顔をしている。
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