ウイリーの風/剣屋
二人を見つめるキリコの胸はときめいている。キリコは単車に乗り始めてまだ半年だ。乏しい技術しか持たず、人目を引くような洗練された走りはできない。だから目の前で無邪気にハーレーをよどみなく乗り回す二人を熱心に見つめる。二人の男らしい逞しい背中に憧れ、自分もあんなふうに乗りこなしてみたいと感じている。
尊敬という名の甘い視線を送るキリコに二人は気づいたらしい。ニンジャをベンチの側まで寄せた。
熊っぽいナナメが、
「キリコにも教えてやろうか?」と右手の人差し指を前後にちょいちょいと動かして言う。
狐っぽいゼロが、
「修行が必要なアクロバティックな技だけど、単車に乗るのがもっと楽しくなる
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