ウイリーの風/剣屋
 

 このエンジン音は紛れもなくニンジャとハーレーの唸りだ。
 絶望の淵を彷徨っていたキリコの表情にわずかな希望がよみがえり、
「ゼロ! ナナメ!」甲高い声で叫んだ。
 木々に群がっていた野鳥が羽音をバサバサと立て、飛び去った。
 醜い男は首を後ろに向けて、エンジン音の方角を悪意に満ちた眼で凝視した。
「予想外だな。だがまだ距離がある。追いつけまい」と焦りを感じさない口調で言った。
 キリコを羽交い絞めにしたまま醜い男は敏捷な動作でドアを開けた。すぐに拉致を敢行できるように車のキーはつけたままらしかった。そのままキリコを後部座席に押し込めようとした。
 しかしキリコは踏ん張る。思いが
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