ウイリーの風/剣屋
 
いがけないゼロとナナメの出現にキリコは励まされ、勇気が息を吹き返した。助けてもらうための時間を捻出しようと試みる。ドアに完全に押し込められないように、両足を車体の下部とアスファルトの間にできた隙間に入れ込み、踏ん張る。両足の筋肉が痙攣しながらも、一心に願う。
「ゼロ! ナナメ! はやく助けて!」
「キリコさん。素直に観念したほうがいいよ。彼らは間に合わない」

 大便が漏れると告白したナナメのせいで、単車の勝負は数分でお預けになっていた。ナナメとゼロは頂上の公衆便所を目指して単車をかっ飛ばしていた。駐輪場が目前に迫っていた。
 情けない表情をしたナナメが大声で言う。
「漏れる漏れる漏れ
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