ウイリーの風/剣屋
 
なその声は耳障りを一層強くさせる。
 情緒が不安定になっている醜い男を刺激しないように、よく吟味した言葉で喋ろうとキリコは思った。しかしその考えはすぐに蒸発した。乳房をいやらしくまさぐる穢れた手が許せない。
「あと何十分かしたら二人とも帰ってくるわよ。そしたらアンタなんか二人にボコボコにされるわ」
 自分の身体の大切な場所をいたずらに触られたことに対する怒りだった。身の安全を考えればもっと適切な言い方を選んだかもしれない。だが女としてのプライドがそうさせなかった。キリコは正真正銘の処女だ。まだどの男にも身体を委ねたことはない。憎々しい感情が湧き上がる。
 キリコの挑戦的な言葉を男は眼だけで
[次のページ]
戻る   Point(0)