ウイリーの風/剣屋
い」
平凡な日常生活の中であるならば、街角で偶然ファンに声をかけられて綺麗だとか美しいと言われるのは悪い気がしない。キリコはそこまで有名なモデルではないから、どちらかというと気分がいいものだ。しかし変態的な行動に走っている奇矯な男に言われるのは、吐き気をもよおすほど嫌になる。
「これ以上もうなにも喋らないで」
醜い男は意に介さず、余った手をキリコのタンクトップの裾に差し入れる。忍び寄る汚れた手が腹部を下から上へとなぞる。ついにキリコの豊満な乳房をがさつに揉み始めた。
「あなた最低よ。最低の中の最低よ」
尻すぼみの声を洩らしたあとに涙が溢れ出る。涙の粒は目尻からすうっと筋となって流れ
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