ウイリーの風/剣屋
 
頬は日焼けの痕のようにまばらな色合いになっている。鼻はひん曲がり、まるで豚の鼻のように見える。火事にでも遭ったのだろうか。それとも火傷でもしたのだろうか。キリコは思わず顔を背けた。
 身体と身体が触れ合う距離だが、キリコは足元から頭にかけて一通り視線をやる。醜い男の格好は暗いのであまり判然としないが、紺色の背広に草臥れた黒の革靴を履いている。
 醜い男は非常にゆったりした口調で言う。
「やっぱり綺麗だ。雑誌で見るよりも断然、断然綺麗だ」
 乱暴な腕の中でキリコは男の妙な言葉――雑誌で見るよりも――が頭にひっかかった。
「……なぜアタシのことを知ってるの?」
「よく知ってる。私がキリコさ
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