ウイリーの風/剣屋
」
「そんな。誰か助けて」
キリコの叫びに返答するのは、野鳥のさえずりと虫の鳴き声のみで、人の声は一切しなかった。
「ほら。誰もいないだろう」
「いやよ、そんなのいやよ。ねえ、やめて。お願い、やめて」
謎の男はキリコの問いかけには応じず、余った手でキリコの後頭部を押さえつけた。節くれだった五指でキリコの髪をもみくちゃにする。頭上はまるで洗濯機の攪拌のようだ。
キリコは謎の男によって身体を反転させられた。
今キリコの目には、四十代くらいの醜い男の顔が映っている。醜い男の顔はどこか様子が変だった。眼を凝らしてみると、顔全体の三分の一が焼け爛れている。唇は厚さがなく非常に薄い。頬は
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