ウイリーの風/剣屋
まるで幽体離脱するかのようにすっ飛びそうになり、喉元が苦しくなる。反射的に低い声で、あああああと呻いた。
キリコは何が何だかわからないといった困惑の表情を浮かべ、両手を使って腕を振りほどこうとした。しかしどんなに力を込めても密着したまま離れない。
――ガチャ、ガチャ。
出し抜けの謎の音とともに、手首に冷たい重みが加えられた。金属質の感触だ。
――ガチャリ、ガチャリ。
続けて聞こえた謎の音とともに、両手の親指にも冷たい重みが加えられた。これも金属質の感触だ。
竦めた首を下方に向けて、夜目で両手を見つめた。そこには銀色の手錠と指錠がはまっていた。ドラマや映画や漫画や小説に登場す
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