ウイリーの風/剣屋
っているのだろうか。それを思うと胸が熱くなる。キリコは彼らの走る姿が好きだ。それも大きな花丸付きで大好きなのである。
数分ほどキリコが心地よい気分に浸っていると、唐突にベンチの後ろから、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃという奇声が静寂を切り裂き、誰とも知れぬ人間の太い腕がキリコの首に回された。がっちりと強靭な力で締めつけられている。謎の人物のほうを振り返ろうとしても、腕によって首が固定されており、動けない。一歩も、動けない。前方の森閑とした闇を眺めることしかできず、粟立つ肌に冷や汗が流れ出す。
相手を目視できない恐怖に反応して足が、膝が、腹が、首が震え出す。締めつける腕の力が増していき、意識がまる
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