ウイリーの風/剣屋
 
ンテージ古着屋オーナーのナナメが談笑している。二人は夏にも関わらず黒のライダースジャケット、黒のモーターサイクルパンツに身を包んでいる。季節が冬でもないのによく似合っているのは、まだ若いながらもバイカーとしての年輪を着実に重ねたせいだろう。彼らは暇さえあれば単車にしがみつく。稼いだ金は部品の買い替えにあてられ、より優れたマシンへと鍛え上げられる。
 二人にキリコは色っぽく流し目を送り、
「ちょっとこっちに来て」と言いながら手招きした。
 キリコは駐輪場脇のまだら石のベンチに腰を下ろす。石の上に溜まった夜露がローライズパンツを湿らせる。そのまま尻の割れ目に、じゅん、と冷たく官能的に伝う。
 
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