ウイリーの風/剣屋
 

 すると暗い中、ひときわ白い汗の湯気を立ちのぼらせたナナメがキリコの元に近づく。
「どうした」
「面白い技なにかやってほしいな」
「適当になにかやってやるよ。ジュースでも飲んでろ」と野太い声で言った。
 キリコの座るベンチの前を旧式のハーレーで時計回りに走行し始める。ナナメは巨漢だ。まるで野生の熊が単車を操縦しているようにも見える。おつむのほうは単細胞である。反対に後部座席に跨るゼロは北海の狐というふうな顔立ちで身体は痩せている。元々はクールで狡賢い男だったが、ナナメに出会った影響により能天気で愛嬌のある性格に近づいている。
 その狐っぽいゼロが熊っぽいナナメに耳打ちする。
「キリコ
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