笹野裕子「今年の夏」をめぐって/葉leaf
 
」という具合に客体が主体に入れ替わっている。しかし、「私が鳴く」においては、鳥は私の鳴き声を聞いていない。よって、「鳥が鳴く」→「私が鳴く」においては「鳴く者」→「鳴かれる者」という交代が起きていない。主体と客体の入れ替わりは片面的である。

(2β)「aが鳴く」(ただしaはAの鳴き声を聞き、Aもaの鳴き声を聞いている。)
 例えば「タマが鳴く」に「ミケが鳴く」が後続する場合(タマとミケは同じ場所にいる)。「タマが鳴く」において、タマは鳴く者、ミケは鳴かれる者であり、「ミケが鳴く」において、タマは鳴かれる者、ミケは鳴く者である。「鳴かれる者」→「鳴く者」、「鳴く者」→「鳴かれる者」の両方の交
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