『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
 
グラスを掛けた。
確か、このサングラスを買った日が、彼女とデートらしいことをした最後だったのではなかろうか。
街は明るかったけれど、並木の木陰には冷たい風が歩いていた。
出勤予定も確認していない。
もし、今日彼女がいなければ、どうしようか全くノープランだった。
仕事の合間に来ている。
今日が駄目なら、当分は面会に来ることも不可能だった。
もっとも、彼女がいたとしても、どうするべきなのか判っていない。

小さなスーパー。
4つだけのレジ台。
ぼくは、お菓子売り場の隙間から、ジュース売り場の合間から、パンコーナーの端からレジを覗いた。
彼女は、いた。
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