『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
 

愛した人には、幸せになって欲しい。
本当は、ぼくが幸せにしたかったけれど、君が幸せならそれで良い。
「だいちゃん、あたし、幸せよ」
そうか。
それなら、良い。
「良かった」
そう思うのに、悲しすぎる。
もうこれ以上、言うことはない。
もし、ぼくが力突くで君を攫っても、君を悲しませるだけだよね。

別れる、本当に別れる時だった。
今日、話しが出来て良かった。
(またね)
そう言いたかったが、またが無い、そう思うと言えなかった。
そんなぼくを見かねてか、彼女が言った。
「じゃあね」
そうして、右手を差し出した。
「じゃあね」
ぼくは、馬鹿みたいに繰り返した。
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