『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
。
ラブレターに認めた気持ちを、受け入れてくれないことは予想された。
しかし、交際相手がすでにいることは予想外だった。
「うん。って言うか、もうあたしから連絡することは、ないと思う」
ゲームセット。
「そっか」もう虫の息だ。
また沈黙。
極僅かに浮かした拳を、呼吸と共に机に置いた。
長い沈黙。
もう、何も言えない。
人目も構わず、この場で大声で泣きたかった。
ぼく思考は、一切の言葉を失ってしまった。
長い、長い沈黙。
「行こうか」
波の僅かな狭間、ぼくは言った。
店外に出ると、爽やかな春の遊歩道があった。
並木が影を作り、桜が咲いていた。
何も言えず、ゆっくり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)