『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
 

また沈黙。
「そっか」力なく言うぼく。
他になんと言えただろう。

店内を見るともなしに見る。
口をもぞもぞして、手で覆ってみたりする。
「そっか」意味もなく繰り返す。
彼女は、なにも言わない。
ぼくのターンだった。
(どんな男や)
(いつから付き会うてんねん)
聞きたいことは、あった。
しかし、それは無意味であると思われた。
胸の中でぼくは、嗚咽を漏らし、涙を流していた。
感情の思うままに、机に拳を叩き付けそうになった。
それもきっと無意味だ。
「じゃあ、もう、あんまりしょっちゅう電話とか、メールするのは迷惑かな」
物分りの良い振りをする自分が忌々しかった。
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