『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
 
で歩く。
ぼくの両手はポケットの中。
そんなこと言いたいんではない。
食事なんかどうでもいい。
君が許せば、このまま連れ去ってしまいたかった。
その笑顔を、いや、かつてぼくだけに見せたであろう笑顔を、他の誰かに向けることに耐えられなかった。
君が許せば。

食事時を少し過ぎていたが、喧騒な店内。
あっちで食器が触れ、こっちでハンバーグが焼ける。
君と初めて出会ったときもここに来たことを、当然君も覚えているだろう。
テーブル席に対面に座る。
改めて顔を見る。
彼女は綺麗になっている。
これまで、可愛いと思うことはあっても、綺麗と思うことは少なかった。
2年前の純朴そうな
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