『神戸』エッセイ6500字/アマメ庵
君は、ぼくのモノクロームの世界を彩色し、枯渇した喉に潤いを与えた。
そう、君がいるだけで、どんなに励まされただろう。
「やあ」クールに、ひょうきんそうに右手を挙げる。
応えて手を振る彼女。
優しい、愛くるしい笑顔。
その笑顔は、君の優しさなんだろう。
止めてくれ、ぼくはまた期待させられてしまう。
勝手に皮肉に考えて、勝手に泣き出しそうになった。
「ビックリボーイに行こうか」なるべく平静に、すぐそばにあるファミリーレストランに誘う。
「ビックリボーイて久しぶりに聞いたわ。ビッグボーイやろ」
「そう。ずっと前から言うてんで」
「あんただけやん」
彼女の一歩前を上向き加減で歩
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