島野律子小感/葉leaf
 
 島野の詩的な習慣的作用の及ぶ「生活」とは、プライベートで孤独な生活である。他人というもの、社会というものは、何かによって切り落とされてしまったかのように、彼女の詩にはあまり明示されない。彼女は実生活では当然多くの他人たちと関わり、おそらく公的な組織にも所属しているのだろう。だが、彼女の詩空間には、社会的な硬くて疲労させるもの、そして未知の領域を多分に抱懐する他人というものの占める領域が少ない。羊歯植物が湿って目立たない場所でしか生育しないように、彼女は詩の展開する領域をプライベートで孤独な生活領域に基本的に限定している。彼女の詩空間は生活で充満していると同時に、社会や他人の不在で充満している。社
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