島野律子小感/葉leaf
できるのだ。外界にあるかのように描かれたものが実は内界に由来し、内界に由来しながらも外界にあるかのような説得力を持つ。
島野は生活を細かく描くので、当然作品には外界の物質や外形的な行為が多く描かれ、それらの「外であること」が強く主張されている。しかしそれら「外なるもの」の多くが内面世界の働きによって、そのあり方が部分的あるいは全面的に規定されているのだ。
内界と外界の相互干渉により、物質や行為は湿度を持ち柔らかさを増している。島野の生活空間における「外なるもの」は、決して我々を拒絶しない。島野はあらかじめ「外なるもの」のなかに滲み込んでいて、その抵抗力や不可解さを骨抜きにしてしまっている。
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