going to the moon/チアーヌ
物腰でありました。
「あなた、誰?」
姫君は男の子の姿を一瞥し、言いました。男の子は驚いたような様子で、姫君を見つめました。
「ねえ、僕が見えるの?」
「見えるわよ。はっきりとね」
「びっくりした。だって今まで誰も、僕のこと見えなかったんだよ」
「そうでしょうね。だってあなたは物怪だもの」
姫君がそう言うと、男の子はつらそうに目を伏せました。
「わかってるよ。僕だってまさか自分が物怪になるだなんて思ってもみなかったんだ」
男の子の様子を見て、さすがに哀れに思ったのか、姫君は慰めるように言いました。
「大丈夫よ、あなたは悪い物怪には見えないわ。でもいつまでもこの邸でうろうろ
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