going to the moon/チアーヌ
 
光りしている板敷きの上には低い寝台が置かれ、その上で紅の衣をかぶって、姫君が眠っておりました。
 枕元の髪箱には、つやつやとした豊かな黒髪が傷つかないように丁寧に巻かれてしまわれ、顔は白く、唇薄く、しっとりと切れ長の瞼、なんとも美しい姫君でありました。
 男の子は上気した顔で、姫君の顔を覗き込みました。何かを期待している目で。しかしその目はすぐに曇りました。
「違う、やっぱり違う。ぼくのお母さまじゃない.......」
 姫君は、まだ十三、四の少女に見えました。
 そのとき、眠っていた姫君がパッチリと目を開けました。そうしてすぐに体を起こしました。ほっそりとはしていますが、健康そうな物腰
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