going to the moon/チアーヌ
 
全く違っており、立派な築土塀が長々と続いておりました。
 どうやらここは、今をときめく顕官の邸のようでありました。
 夜なので当然のことながら門は閉まっており、門番の侍もおりましたが、男の子はするりと通り抜け、中に入り込んでしまいました。門番は男の子に気がついた様子はありませんでした。良く見ると、男の子の体は透けて見えます。そう、この男の子はこの世のものではないのでした。
 辺りはもう真っ暗になっておりました。けれど、月明かりのおかげでいくらか邸内の様子がわかるのでした。高く聳える木々、前栽の花々、しっとりと繁った苔、澄んだ池に遣水。ここは、贅を尽くして整えられた邸だということがわかりました
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