アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
された歓迎
晩餐会で舞台上にありうべからざる奇形を見出した瞬間、その最大血圧は
463を叩き出し、傍らで馬鹿笑いを轟かす馬鹿者を激しい動悸と上気の
中で憎悪したのだった。実際、この激甚な憤怒がムッソリーニに転嫁され
ていなければ、脳の血管があるいは切れた可能性も否めない。図らずも侯
爵は暗殺によって世界史を塗り変え得たかも知れなかったのだ。
そして3年後、ヴィシー政権下でのフランス巡業を取りやめたのは、付き
人のロドルフォが預金通帳をくすねて女と出奔してくれたお蔭だった。
何しろ付き人なしではにっちもさっちも行かない侯爵だった。
「しばらく生活には死ぬほど窮したが、返す返すもあの
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