アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
ところで、それだけの話
なのである。このようにおのれの官能を記憶に留めて欲しいが為にひと時
滞在した男達は、却ってそこに失念を置き忘れて来るのではなかろうか。
だから子が生まれる。そんな風に思われて仕方ないのだ。これは余のひが
みだろうか。まあ何とでも言うがいい。
なるほど経験は内なる財産になるだろう、確かに事実は思惟や空想より持
ち重りがする。あまつさえ記憶という形で我々はそれを蓄え、次回に役立
てることができるのだ。それでも生涯のスパンで快楽の位置づけを考えた
場合、保存に際してそれは下位修正されるに違いない。何故ならそれより
重要な事柄が幾つかあるからで、拭い去れぬ悲痛
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)