アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
悲痛もまた多い。こと肉の快
楽に比べたら、嫌な野郎が目の前ですっ転ぶ方が少なくとも爽快なのでは
ないかと余は考える。
実際、世話になった見世物小屋をたんまり儲けさせてやった後で余が転売
先の最初のサーカス団にいた時、労働搾取者である団長が旺盛な空中ブラ
ンコ乗りに若い女房を寝盗られたと知って、我々は腹が痛くなるほど笑っ
たものだ。尤も余には腹がないので、顔面がこむら返りを起こしたのであ
ったが。
また別の団では、我々の如き「出来損ない」を蔑視してやまなかった哀れ
な猛獣使いが熊に頸動脈を断たれた時でさえ、余の心中に快哉が響かなか
ったと言えば嘘になる。
要するに交合のファ
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