アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
 
しかったので、いたずらに木肌を温めて痛むだけだった。
「えい、くそ」
この稀少性に併せ、ほぼ頭部だけで生き抜いたという秘蹟めいた存在意義
により彼を列聖しようという声も一部大衆から挙がらないではない。しか
し福者でさえない上にその出自と後述の、キリスト教理にもとる思想が問
題視され、現在に至るもヴァチカンは請願書の受理を拒否している。

「しかし見方を変えれば不幸でもないよ。余も一時は妄想と失望とに苦し
められはしたがね」
病床に在った侯爵は沈鬱な表情で自己解説したものだ。
「何しろ、ただの洞窟探検に過ぎんさ。それに結局、そこでクルーガー金
貨を拾った者はおらんのだろう? 対
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