アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
ある。
若かりし侯爵の生きた時代は、ポリティカル・コレクトなる言語学的偽善
もバリア・フリーなる最大公約数的欺瞞も存在しなかったので幾多の困難
もあったが、ひと括りに無産者として生活水準を障害者年金で制限され、
人件費の高騰でボランティアの善意と介助犬の忠心をしか恃めなくなった
現代と違い、甚だしい不具者ほど意欲的に金を稼げる世の中でもあった。
曰く、「できない事を凌ぐくらいにできる事もあったのだよ」。
鼻の下にチュチュを穿いて特製のトウシューズで踊るなど数々の当たり芸
でひと財産を築き、後年は「サロメ」のヨカナーン役(頭部切断後の)で
スカラ座客演を果たすほど有名になったの
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