アルフォンソ・サノヴァビッチ4世についての覚え書き/salco
を知らぬ者には「カニ男」とか「クモ人間」と呼ばれた。
しばしば彼が好んで話題にした排泄物については、常に顔の直下に地面が
あったので田舎では牛馬、都会でも犬猫の糞尿を強迫的に捉えざるを得な
かった生活史に因すると考えられる。
その一方で、胴体部分と四肢の大部が割愛されている為、張り出した後頭
骨に守られた心臓が送り出す血流は直ちに脳を巡り、侯爵は晩年、「脳細
胞がしばしば過呼吸になるほど明晰だった」と幼年時を振り返ったものだ
。だから自分ほど思索向きの人間はおらず、見世物になるよりも然るべき
教育さえ受けていれば、スピノザやエラスムスなど束になっても敵わぬ論
陣を張れたであろう、
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