大蛇と影を重ねて/ポッポ
 
そうな、事実として?今ここにしかない演奏?だった。
 弾き終えると、膝の上に両手を置き、悦びで身体を小刻みに揺らしながらあの光景を思いだす。――ヒレンクターが神に巻きつき、神を絞め殺したあの姿。あれを見てからの僕は、自分の中に、これまでになかった感覚が芽生えていることに気づいた。
 神を呑みこまんとする大口を開いたヒレンクターと、怒りの表情を絶命した先にまで持っていった神。それらが重なり合った形、色、なによりもゾクゾクする雰囲気、それを味わってからの僕は、閃きのコツといったものを感覚で理解したような気がしている。
 今、以前なら見向きもしなかったところに快感が潜んでいることを知った。もう、動
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