大蛇と影を重ねて/ポッポ
 
あのとき神の背中の向こうから、私を窺おうとしている大蛇と目が合ったことが忘れられない。
 それからの私は、これまでになかった感覚、まるで感情の小数点以下までも正確に算出するような力を得ていたのだ。
 あれは、さまざまな感情に建った柱の陰を透視するような力だった。


   ○意外な悦び

 僕はピアノを弾いていた。
 不思議だ、これまでとは違う。これは誰の曲でもない……。わがままな気分へ外部からはなにも干渉させず、感覚の指示するままに弾き、記憶にはないほどの快感を味わっている……。
 これまでは譜面を見ながら誰かの曲をそのまま弾いていたが、今の演奏は、これまでにも今後にもなさそう
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