大蛇と影を重ねて/ポッポ
 
捨てながら内側の深くのものを開放させて?ひとつしかないもの?をごまかしなく暴きだす快感。
 ――演奏時間は約七分――
 演奏が終わったあと、会場からは出演予定のなかった奏者へ向けての拍手音があがる。でも僕は、それをどうでもいい価値として会場を出た。
 会場から出る前、僕を知るピアノ教室の先生が背後から僕の名前を呼んで近づいてきたが、僕が呼びかけをあえて無視して先へ歩いていることを察したのか、途中で近づくことをやめ、駆け足の音を絶やした。
 帰りぎわ、市民会館の付近を歩いていると、ヒレンクターがバカになったように笑いはじめる――。声は出ていないが、それが?バカになって笑っている?ことは、よく
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