大蛇と影を重ねて/ポッポ
も震わないような安らいだ時間、父と母が、僕が知る上で?もっとも?と呼べるような優しい表情をしていたが、もう二人は見えず、僕は次の場面に神と大蛇が争っているのを見た。
初めての光景に、鼓動は突如――傘の手もとが竹とんぼを飛ばすときの要領でまわされ、傘布に乗った雨の滴をあたりへ撒き散らすようにして震いだす。振動によって、もぐっていた刃物が接触している箇所を傷つけはじめた。
――僕は胸の疼きを感じ、臆病な狂人になる――
生まれたときからずっと自分の胸に突き刺さっているガラスの破片のようなものを抜き取ると、僕はわけもわからず、なにもないはずの空気になんども突き刺した。それを握る掌は傷つき、胸の
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