消臭考/salco
 
容とは自ずと違う。看過と寛恕が自ずと違うように、
だ。悪意のない他者を、その取るに足らない過失(この場合は過失とも
呼べないが)を以て一時にせよ憎む権限など何ぴとにもありはしない。
それはただ愚かしい傲慢でしかなく、唾棄すべき相手はおのれ一人だ。

お互い様、という慣用句がある。家電製品をペットにしているような老
女の笑顔を髣髴とさせる自治会めいたこの言葉も、手垢が見えて好きで
はない。好きではないが世の実相なのだ。誰もが大気を吸い二酸化炭素
を吐いて生きている。敷地を接し、軒を接し、上階に住み下階に住み、
道を歩き交通機関を同じうして生活している。交わりたくなければ距離
を取
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