消臭考/salco
 
いこそすれ激昂するのはお門違いという
ものだ。ましてこのおっさんは悪意でしたわけではない。
許してやってちょーだいよ、と私が代わりに謝りたかったが、ついさっ
きまでの話し相手が般若となってしまっては車内で恥じ入るしかなく、
話しかけても応じない彫像の如く仁王立ちしているからには為す術がな
かったのだった。

四十になんなんとする彼女には彼氏がいて、同棲しているわけではない
が喫煙をやめさせたと言っていた。それは両者の健康に良い。おのれに
火の粉がかからない限り、相手が煙草を吸おうがアスベストを吸おうが
構わないタチの私としては、心から敬服したものだった。
しかし教条と不寛容と
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