消臭考/salco
デ・ジャヴもメ・ジャヴも五感で呼び覚まされる。目で耳で舌で感触
で、既視感も故事も鮮やかに呼び覚まされる。これを感応というのだろ
う。それは我々が頭の中でこねくり回している思惟とやらより格段に色
彩豊かで確固たる形象を伴う。おちょぼ口の詩歌などより官能が勝ると
いうことだ。余談ながら、そうした神経の鋭敏は、孤絶の自覚の一方で
共感に振り向けるべきではあるだろう。でなければアタマのバランスが
保てない。
とりわけ匂いは経験というより体験として、言語中枢をすっ飛ばして原
形のまま記憶に折り畳まれている。言うまでもなく記憶は事実を変形・
歪曲して行く。必ずしもこれは時間の経過や
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