シコシコ/攝津正
 
。クビになったら、次の仕事のあても無い。自分を雇ってくれそうな所を一つも思いつかない。と言って文筆や音楽で生活出来ると思える程楽観的にはなれなかった。
 休職が決まって、一ヶ月余振りに録音と写真撮影をした。攝津には自分の姿が醜く見え、プロフィール写真から外し、ピアノの画像を代わりに置いた。自分の顔は見るからに病人という感じの不健康な物であった。自分の演奏は拙く下らぬものだった。聴き返して意気阻喪した。自分は駄目人間だと思った。ダメナ人である。
 労働も駄目、芸術も駄目、何もかも駄目な凡庸な人。下らぬ人。卑小な人。攝津は尚更自分で自分が嫌いになった。働く事も出来ぬなら、死んだほうが良いのではない
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