10/イシダユーリ
た
彼女は
そのたび
すてきね
すてきね
と言って
わたしは
思うかぎりの
男や
女を
凌辱
しなければ
ならなくなった
すてきね
すてきね
まるで
胸が
剥がれおちるようだ
彼女の
おうちには
生きているものが
なにもいない
なにもいなかった
虫
虫
虫
そして
臓腑
臓腑
臓腑
そして
海や
木や
夕焼けや
雑踏
が
貼り付けられて
いる
きれいね
きれいね
いつでも
きみのいえは
火事だ
みな
燃えてしまう
息が荒いことも
みんな
覚えている
と
彼女は言った
男や
女は
わたしに
凌辱
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