10/イシダユーリ
 

彼女は
そのたび
すてきね
すてきね
と言って
わたしは
思うかぎりの
男や
女を
凌辱
しなければ
ならなくなった
すてきね
すてきね
まるで
胸が
剥がれおちるようだ
彼女の
おうちには
生きているものが
なにもいない
なにもいなかった



そして
臓腑
臓腑
臓腑
そして
海や
木や
夕焼けや
雑踏

貼り付けられて
いる
きれいね
きれいね
いつでも
きみのいえは
火事だ
みな
燃えてしまう
息が荒いことも
みんな
覚えている

彼女は言った
男や
女は
わたしに
凌辱
[次のページ]
戻る   Point(8)